「覚える」から「思い出す」へ

先日脳科学者の池谷裕二(イケガヤユウジ)氏が対談の中で「記憶」について話されている記事を読みました。おこがましくも私が考えていることと似ていました。「やっぱりな」という感じです。ですから今日は「記憶」について少し書いてみました。

「覚えるのが苦手」という中・高生にとっても今日からでもやってみる価値あり!的な内容です。「うちの子はどうも・・・」と思っていらっしゃるご父母の方も必見です。最後まで読んでみてください。

ご存知の方も多いと思いますが、初めに「記憶」というもののしくみについて簡単に説明しておきます。「記憶」とはただ「覚える」ことと思われがちですが、実は2つの内容を含んでいるそうです。

一つはまさに「覚える」です。「覚える」にもいろいろな方法やレベルがありますが、とにかくまず「覚える」です。これは「インプット」とか「入口」とも言われます。

そしてもう一つは「取り出す」です。いったん引き出しにしまったものを取り出すイメージをしてください。これは「アウトプット」とか「出口」とも言われます。

私は最近テレビを見ていて人の名前を思い出せないことがよくあります。この現象はまさに覚えたけれども取り出せない、「インプット」したけれども「アウトプット」出来ない状態です。年齢を重ねるとしかたのないことらしいのですが、中学生や高校生にとっては「しかたがない」であきらめることはできません。

池谷氏は対談で次のように述べています。

多くの人は「記憶」というと、詰め込むもの、覚えるもの、入力するものだと勘違いしています。しかし、記憶力は出力しないと鍛えられない。

学校の勉強は詰め込みがすごいのですが、取り出しの練習はしません。でも、取り出す練習をすることによって、記憶って使えるようになるんです。受験中に思い出さなければ覚えてないのと一緒です。

(中略)

だから、思い出す訓練をしないといけない。どうしても覚えておきたいものは、何度も思い出す訓練をすることだと思います。

リトリーバルトレーニングと言われています。この方法が効率的だと科学的に証明されたのは、実は、10年くらいしか経っていません。

学校では、「まとめノートを作りなさい」とか「自分の取ったノートを見直しなさい」と言われるじゃないですか。

でも、これまでにいかなる勉強法よりもリトリーバルトレーニングが一番点数が高いというのが証明されています。

最近の『Science』誌でこんなレポートがありました。単語を覚えるだけなんですけど、3秒に1回くらいパッ、パッ、パッ、パッ、パッ、パッと連続50個見せて、「はい、おしまい。明日思い出してください」と言うんですね。

面白いのは、その後2つのグループに分かれて、「もう1回復習してもいいですよ」と言って、1グループはもう一度同じように見せる。もう1グループは見ないで、「何があったかできる限り思い出してください」と、単語を言わせるんです。

間違ったとしても、「それはちがう」とか絶対に言わない。ただ、できる限り思い出します。次の日になると歴然です。思い出したグループの点数が高い。

他にも、たとえば小説を読んでもらって、1回読んだグループ、2回読んだグループ、3回読んだグループと分かれて、その内容のテストをする。当然ですが、読んだ直後は3回読んだグループが一番よく覚えています。

ところが1週間とか1か月経ってテストすると、点数に差が全然なくなるんです。つまり、何度も読んだからといってよく覚えられるわけじゃない。入力を繰り返しても点数は上がりません。

        WEDGE Infinity  特別対談企画 「出口さんの学び舎」 2017 5 19

「覚える」から「思い出す」へ

ここに「覚える」の大きなヒントがあると思います。いわゆる「覚えるのが苦手」「暗記が不得意」という人は覚えることだけ一生懸命やっている可能性があるということです。真面目な人ほど音読したり真っ黒になるまで書きなぐったり覚えることに時間をかけ過ぎているのではないでしょうか。

だったらテストで「書ける」ためには、ご自分の学習時間の配分を「覚える」時間から「思い出す」時間にシフトすればよいのです。

「思い出す」勉強方法とは?

では実際に「思い出す」勉強ってどうすればいいのでしょうか。当塾でお勧めし実践してもらっている勉強をご紹介しておきます。

学校の授業を使った「思い出す」勉強

① 学校の授業では黒板に書かれた内容プラス黒板には書かれなかったが先生が話された内容、そのとき疑問に感じたことなどをノートに書き残します。

② 家に帰ってきて、その日の授業を思い出しながら「気がついたこと」や「そう言えば、こんなことも言っていた」というものを加筆(書き加えること)します。要は授業を思い出しながら再現するわけです。

※この再現授業の勉強はどの科目でも10~15分程度で終えることができます。また学校の授業に積極的な姿勢で臨むことができるようになり、一粒で2度おいしい勉強だと思います。

問題集や教科書を使った「思い出す」勉強

先生も生徒も自分一人。何となくできた問題や、説明を読んで初めてわかった問題などの復習として「自分で自分に説明」する方法です。机に座ったままでもいいですが効果を上げるなら立って声に出して学校の先生ばりの説明を行います。

これは単なる復習ではなく問題や解説を思い出しながらの仮想授業です。例えば・・・

まず分母が4と6なので12で通分します。そのとき分子は多項式なので、それぞれの分子の前には(   )をつけて式を書きます。この(  )はとても大切で符号のミスを防いでくれます。・・・って感じで説明できたら、この人はこの手の問題をミスることは絶対にありません。

いくら覚えたつもりでも本番で使えなければ覚えてないのと同じ。かえって自分は覚えられないと自信をなくしてしまいます。

「覚える」は「思い出す」ための手段と割り切って「思い出す」中心の勉強に切り替えてみてはいかがでしょうか。

それでは今日はこのへんで

最後まで読んでくれてありがとうございました。